ローカルクラフトを巡る、五島列島。【旅先案内人 vol.20】五島リトリート ray#5

Published On: 22-10-20Tags: Categories: Story

普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。

【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。

(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)

技を今に輝かせる、五島の職人たち。

旅の醍醐味に、「地域の”ものづくり”に触れること」があります。その土地で生まれた必然性が宿る地域の手仕事。技を今に輝かせる職人達の手によって磨かれ、この地ならではの気づきを私達に与えてくれます。

私たちのホテル「五島リトリート ray」では、コンセプトのひとつに「local crafts」(地域の光)を掲げており、地域作家によるクラフトたちが、rayの空間を彩ります。五島の
素材を活かしながら、オリジナリティ溢れるものづくりを行う地域の作り手の声に、そっと耳を澄ませていただければ嬉しく思います。

五島のエネルギー溢れる、木の作品 <wan -made in Gotoislands->

自然豊かな五島列島には、バリエーション豊かな樹木が自生しています。そんな木々を活用して作品づくりを行うのは、木工作家 wan -made in Gotoislands- の坂口喜人さん。木のぬくもりを感じながらも、シャープで凛とした佇まいが特徴的な坂口さんの作品にひと目で引き込まれ、現在ホテルのspaとショップで取り扱いを行っています。


wan -made in Gotoislands-

「9年ほど前に、名古屋から五島へUターンをしてきました。高校卒業後に島外に就職したのですが、都会の喧騒に疲れて戻ってきたところ、島の”間伐材”の多さに気づきました。引き取り手のいない間伐材は捨てられていくしかなく、勿体無い。何かに活用できないか。そんなことを考えている最中に出会ったのが、フィンランドの伝統工芸品である “ククサ”という木製のマグカップでした。」


坂口さん

最初は別の仕事をしながら作品づくりを行い、地元のマルシェへの出展や、カフェでの委託販売など、小さく活動をはじめた坂口さん。その後、当時の仕事を辞めたタイミングで、本格的にものづくりをしてみようと考えたそうです。さまざまな木工に触れたり、動画サイトで作り方を独学で勉強しながら、現在のスタイルを確立していきました。

「フィンランドのククサは白樺の瘤の部分で作られていて、非常に野生味がある印象ですが、これをもっと普段使いしやすく日常に馴染むものを作りたいと思ったんです。人々の生活に欠かせない食器を、シンプルに力強く、でも、どんな場面にも合うように。そこにあるのが当たり前かのようなデザインに仕上げました。」

デザインから製作まで、全て自身で行う坂口さんの作品は、既視感のない個性的な佇まいが魅力です。現在では、三越伊勢丹でPOP UPを行うなど、島外からも注目度が高く、五島発のウッドテーブルウェアブランドとして、じわりじわりと名を広めています。

台風が去ったあとは、電話が鳴る。

「以前は島外の木材も希少性の高いものは積極的に使用していましたが、現在は島内の間伐材をメインとし、島外や産地不明の物に関しても解体現場から出てきた物など、循環を大切にしています。

伐採後は自身の工房で3~5年、自然乾燥させています。その後、乾燥状態を見極めて細かく製材していきます。ククサは箱型の状態にした木材から一発の削り出し。この時に個性豊かな木目が出るように木取りが出来るのは、自身で丸太を製材できる環境にないと難しい事なので楽しみの一つでもあります。手にとって頂く方にも、どんな木目のものにするのかを選ぶ楽しさを感じていただけると嬉しいです。」

「活動をはじめてしばらくすると、多方面から”木を切って欲しい”と連絡をいただくようになったんです。切り方を父に教わって、自分で切りに行くようになりました。特に、台風後にはよく電話が鳴ります。土地柄、台風も多いので木が倒れてしまうことも多々あるので、そんな時に声をかけてもらいます。」

台風のエピソードは五島ならでは!と思わず関心してしまいました。地域の困りごとを、ものづくりにポジティブに活用していく。とても素敵な作品作りの在り方だと感じます。現在、坂口さんの作品では、サクラ、タモ、シイ、カエデなどの木を使用しており、ひとつのカップや食器を通じて、五島の自然の豊かさが伝わってくるようです。

「木」の命と向き合う。

「作品づくりをしていると、木も生き物なんだなと実感します。削っていると中に虫が住んでたり、ひとつひとつ表情や柔らかさも異なっていて、個性もある。たまに、すごくテンションが上がる木に出会うこともあって、こんな木目が良い木が島にあったんだなと驚いたりもします。もっと美しくしてやるぞ!と思いますね(笑)」

「私の作品で、レジンを混ぜて削り出したシリーズがあります。愛する五島の海中を表現した、ちょっと遊び心を入れた作品です。wanの工房は福江島のシンボルでもある鬼岳の麓にあるのですが、上水も通っていない地域に所在しています。生活用水は地下に雨水を溜めるタンクを設置し濾過していて、降雨が少ない時期は貯水がゼロになり近くの湧水を汲みに行く事も多々あります。 たくさんの自然の恩恵を受けて生活していますが、生きていく上では、どうしても犠牲も出してしまいます。レジンのシリーズは売上の一部は、自然保護活動団体へ寄付していて、これは私なりの自然への感謝の気持ちと、烏滸がましいですが、お返しだと考えています。」

自然の中で暮らしながら、循環を大切に、環境に対して敬意を払いながら木と向き合う坂口さん。そんなマインドで生み出された五島ならではの作品は、使っているうちに私たちの暮らしにやわらかく溶け込み、使う度に五島の自然へと心が帰っていくような気がします。

五島列島には、木の他にも地域にある素材を新しい解釈で見つめ、ものづくりをしている職人がたくさん存在しています。”モノにはふるさとがあり、その土地で生まれた理由がある。ぜひ五島リトリート rayで、そんな職人たちの魂のカケラに触れていただければ幸いです。

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wan -made in Gotoislands-
HP:https://wan-madein-gotoislands.jimdofree.com/
オンラインショップ:https://shop.wangoto.net/
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