【瀬戸内リトリート 青凪】2026年春、わらぐろの記憶をつなぐ―西予市の米文化を紐解く宿泊型企画展を開催
更新日:2026 - 08 - 30
しめ縄職人・上甲清氏との出会い
2026年の正月、青凪のエントランスには一つのしめ縄が設えられました。
作り手は、西予市・宇和町生まれ、89歳の上甲清氏です。代々米農家を営む家に生まれ、60歳を過ぎてから、わらぐろのある風景を守るため「わらぐろ保存会」を立ち上げた人物です。
上甲氏の、わらぐろを守りたいという思想に触れたことが、今回の企画展のきっかけとなりました。しめ縄の展示にとどまらず、その背景にある西予市の米文化そのものを知っていただく機会として、宿泊型企画展を開催しました。
姿を消しゆく、わらぐろのある風景

愛媛県南部、四国でも珍しい縦じまの地層を有する西予市。
約4億年前から現在までの岩石が残るこの土地には、リアス海岸、盆地、河成段丘、カルスト台地といった多様な地形が広がります。標高差1,400メートルにわたる自然環境のなか、森・川・海をつなぐ水の循環が、米づくりと人々の暮らしを長く支えてきました。
稲刈り後の藁を円錐状に積み上げ、乾燥・保存する「わらぐろ」は、西予市に伝わる田園風景として親しまれてきましたが、今、少しずつ姿を消しつつあります。
展示、食体験から西予市の文化をつなぐ

企画展は、2026年3月10日から5月16日まで、宿泊者限定で開催。正月展示を含む上甲氏のしめ縄を展示し、四半世紀以上にわたり米づくりを続けてきた西予市の自然やわら文化の風景を紹介しました。

会場には上甲氏の作業場も再現し、道具の並びから、制作の場にある空気感を伝えています。

会期中は、すべての宿泊者に向けて、通常の朝食を、西予市食材を用いた特別朝食としてお届けしました。料理長自らが現地を訪れ、風土や生産者の営みを体感したうえで食材を厳選した一皿です。
肱川の源流域、寒暖差の大きい山あいで育った「宇和米」を主役に、地元醤油とみりんを合わせて熟成させた調味料、豆腐店「豆道楽」の豆乳と「ゆうぼく」の三元豚による豆乳豚しゃぶを提供しました。
作り手と交わすことば
宿泊者向けの企画とは別に、一般の方向けの企画も実施しました。

3月29日には、上甲氏との対話を通じて暮らしの道具を自らの手で編み上げる、ほうきづくりワークショップを実施。
親子や友人同士での参加が多く見られ、完成した箒を持ち帰れる体験や、上甲氏の人柄に直接触れられたことへの満足の声が寄せられました。


4月5日には、上甲氏と青凪の開業当初よりエントランスとギャラリー奥の造園を手がけてきた風景家・小野豊氏によるトークセッションを開催。
しめ縄づくりの実演を挟みながら、その営みを続ける当事者としての上甲氏と、風景として捉える小野氏、それぞれの視点から対話が交わされました。

会の途中では、宇和島産の米を使ったおにぎりと、上甲氏が普段愛飲しているお茶が振る舞われ、参加者は共に味わいながら耳を傾けました。参加者からも活発に質問が投げかけられ、終始興味深そうに対話に聞き入る様子が見られ、セッション後も、上甲氏・小野氏のお二人と参加者一人ひとりが、しめ縄の展示を囲みながら言葉を交わしていました。
稲作そのものが減少するなか、材料の確保は年々厳しさを増しています。それでもなお手を動かし続ける背景には、上甲氏のある信条があります。
「最後まで、諦めないということが、大事だと思います」
その言葉には、変わりゆく時代のなかでも一つひとつの手仕事に向き合い続けてきた、上甲氏の姿勢が滲んでいるようでした。

ワークショップ、トークセッションともに、最後は上甲氏恒例のじゃんけん大会で締めくくられ、会場は和やかな雰囲気に包まれました。

瀬戸内と物語を紡ぐ
しめ縄の展示から、食、そして作り手との対話へ。西予市の米文化は、複数の切り口を通じて宿泊体験のなかに織り込まれていきました。
青凪は、これからも「地域のショーケース」として瀬戸内の各地に息づく文化を紹介し、宿泊体験というかたちでお客様につないでいきます。





















