2025年夏 開催｜KEIRIN HOTEL 10「藍染体験＆地元3ブランドポップアップイベント」＠岡山 玉野市

岡山県玉野市にある KEIRIN HOTEL 10 は、競輪場に併設して建設されたホテルで、旧玉野競輪場の廃材や自転車部品を家具やアートにアップサイクルしています。競輪場が育んだ時間や記憶を、新しいかたちに結晶させる――まさに過去を受け継ぎ、未来へと紡ぐ温故知新のフィロソフィーが息づく場所です。そんな KEIRIN HOTEL 10で2025年夏、サステナブルなものづくりと地域の魅力を体感する特別なイベントが開催されました。

過去を未来へつなぐ思想が重なり、新しい循環が芽生えた夏

岡山県は全国有数の繊維産地で、特に倉敷市は「国産デニム発祥の地」として知られています。戦後、学生服の生産地として発展した歴史を背景に、高度な織布・染色・縫製技術が受け継がれてきました。

その倉敷市で活動するのが、ホテル開業当初からご縁のある株式会社ITONAMIです。ITONAMIはアパレル事業にとどまらず、宿泊やアクティビティ事業などを幅広く展開。さらに、使われなくなったデニムを糸にまで分解し、新たな布地へと蘇らせる「再生デニム」プロジェクトを通じて、持続可能なものづくりを探求しています。

「役目を終えたものに新しい命を吹き込む」という思想が、温故知新の思想とも重なり合い、今回の共同イベント開催へとつながりました。

旅の途中で触れる伝統と文化。藍染からポップアップまで

2025年夏、瀬戸内国際芸術祭の熱気が玉野を包み込むなか、KEIRIN HOTEL 10は「ものづくり」「循環」「地域との出会い」をテーマに二つのイベントを開催しました。

7月には、デニムブランドITONAMIとともに、藍染ワークショップを実施。参加者はお気に入りの衣類や布小物をインディゴ染料に浸し、少しずつ深い青へと変化していく布の姿に見入りました。伝統の技を自らの手で体感するひとときは、旅の記憶に残る特別な体験となりました。

 8月末には、地元のアーティストやブランドが集うポップアップイベントを開催。陶芸家やデニムブランド、はちみつづくりに励む地元の企業など、多彩なつくり手がホテルに集まり、アートやクラフト、食を通じて玉野の魅力を紹介しました。端材や廃材を生かしたコラボレーション作品も並び、訪れた人々は「ここでしか出会えない文化」を楽しむことができました。

つくり手と出会う─ここにしかない体験

イベントには国内外からゲストが訪れました。特に藍染ワークショップでは、海外ゲストから「日本ならではの体験ができた」との声があがり、地域の魅力を直接伝える場となりました。

デニムブランド ITONAMI：山脇さんはこう振り返ります。
「倉敷市と玉野市は隣接していても文化圏は異なります。今回のイベントは、デニムがあまり身近でない玉野で活動を紹介できる貴重な機会でした。宿泊者の滞在時間に合わせた開催だったので大人数ではありませんが、一人ひとりに丁寧にものづくりを伝えられたと感じております。今後も興味を持ってくださるお客さまがいれば、積極的にご案内したいです。」

藍染からポップアップまで、一連の体験には「循環と再生」の物語が貫かれていました。ホテルのある玉野を舞台に、隣接する地域文化が交わり、そこから新しい価値と出会いが生まれる。異なる文化圏が響き合うことで、KEIRIN HOTEL 10ならではの体験が形づくられました。

旅の記憶に残る出会いとつながり

ホテルという“滞在の場”で行われるイベントには、商業施設やギャラリーでは得られない特別な価値があります。宿泊者が偶然イベントに出会い、地域の人々と交わることで生まれる小さな交流。そのひとつひとつが、地域の文化を知る入り口にもなりました。

なお、イベントを通じて完成したデニムのオブジェは、現在ホテルのレストラン「Cafe Restaurant FORQ」に展示され、訪れる人々が触れられる“生きたアート”として存在し続けています。瀬戸内の海辺に立つホテルから生まれた小さな交流の芽は、これからの玉野の魅力をかたちづくる大切な一歩となりました。

KEIRIN HOTEL 10 by 温故知新 について