競輪を間近で体感する。滞在しながら観戦するという斬新な発想で生まれたKEIRIN HOTEL 10

更新日:2026 - 06 - 01

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岡山県・玉野市。瀬戸内海を望むこの港町に誕生した KEIRIN HOTEL 10 by 温故知新 は、日本初の「スタジアム一体型ホテル」として知られています。

目の前に広がるのは、玉野競輪場。通常であれば「観戦する場所」として認識される競輪場の隣に、なぜホテルをつくったのか。そこには、競輪文化を新しい形でひらいていくという発想がありました。

港町で積み重ねられてきた競輪の記憶

競輪は、1948年に日本で生まれた公営競技です。全国各地の競輪場で、長い時間をかけて地域に根づいてきました。玉野競輪場も、1950年の開設から70年以上、この港町の歴史とともにあり続けた場所です。

ただ、競輪にはどこか「知っている人だけの文化」というイメージがありました。KEIRIN HOTEL 10が目指したのは、そのイメージをひらくことです。競輪を知らない人でも自然に足を運べる。ホテルという場を通じて、競輪文化を次の時代へつないでいく。そんな発想から、この場所は生まれました。

競輪文化を、空間へ翻訳する

館内に足を踏み入れると、まず目に入るのは、競輪をモチーフにした軽やかなデザインです。ホテル名の「10」には理由があります。競輪は主に9人で競われる競技ですが、宿泊者がその10番目の選手になった気持ちで滞在する──「YOU ARE THE 10TH RACER」というコンセプトが、この数字に込められています。

客室の各フロアは、競輪の9つの車番カラーをイメージした色で彩られているのが特徴です。トラックのラインを思わせるグラフィック、自転車のスピード感を感じさせるディテール。

競技としての競輪を、そのまま再現するのではなく、ホテル空間として再編集することで、ポップで親しみやすい世界観へと落とし込んでいます。競輪を知らない人でも自然と楽しめる理由は、こうした「翻訳」の積み重ねにあります。

役目を終えたものが、新しい物語へと再編される

このホテルを象徴する特徴のひとつが、競輪場で役目を終えた素材のアップサイクルです。

スタジアムの椅子はホテルのサインやパブリックスペースの家具へ。玉野競輪場のマスコットキャラクターである「ガッツ玉ちゃん」のシルエット大看板は浴場施設目印に。有料席の座席案内表はレストランのテーブルへ。旧玉野競輪場で使われていた自転車フレームやハンドルは、シャンデリアや照明として新たな光を灯しています。

それは単なる装飾ではありません。長い時間、多くのレースを支えてきた素材たちが、再び空間の一部として息を吹き返しているのです。

「古いものを壊して新しくする」のではなく、「受け継ぎながら、新しい価値へ変えていく」。その思想は、温故知新が大切にしてきた姿勢にも重なります。

近年では、アップサイクルをテーマにしたイベントや展示なども行われています。

競輪文化を「保存」するのではなく、現代の感性と掛け合わせながら、新しい表現へと更新していく。その積み重ねが、この場所ならではのカルチャーを育てています。

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競輪場の時間に身を委ねる、ここだけの滞在体験

客室やラウンジ、テラスからは、実際に競輪場を望むことができます。

レース開催日には、選手たちの疾走感や歓声がダイレクトに伝わってきます。トラックを駆け抜ける一瞬の緊張感を、客室から体感するという、これまでにない距離感。一方で、レースのない日には、広大なトラックに静けさが広がります。同じ景色でありながら、まったく異なる表情を見せる競輪場。その変化を、滞在の中でじっくりと感じることができます。

館内には、レストランやサウナを含む浴場施設も備えられています。浴場はレース非開催の期間に限り、宿泊者や一般の方へ開放されています。レース開催期間中は競輪選手もホテルを宿舎として施設を使用するためです。競輪という競技の日常が、そのままホテルの運営リズムに組み込まれている。それもまた、このホテルならではの姿です。

地域の新しい目的地へ

KEIRIN HOTEL 10 が目指したのは、競輪ファンのためだけの宿ではありませんでした。

玉野を訪れる新たな理由をつくること。競輪という地域資産を、より多くの人にひらくこと。既存の文化を守るだけでなく、新しい価値として再編集していく。その姿勢は、温故知新が大切にしてきた「地域の光を見つける。磨いて、届ける。」という考え方にも重なります。

競輪を知っている人も。初めて触れる人も。観戦するだけでは見えなかった景色が、滞在することで生まれます。その積み重ねが、競輪という文化をより身近なものへと変えていきます。KEIRIN HOTEL 10 は、競輪場という場所の可能性を広げながら、新しい旅の目的地を生み出しています。