【五島リトリート ray】五島の風景を、一杯と一皿に。GOTOGINと紡いだ一夜
更新日:2023 - 09 - 01
長崎本土から約100km離れた、五島列島・福江島。
島の北西部にある小さな集落「半泊」では、五島の風景を香りで表現するクラフトジン「GOTOGIN」がつくられています。島の南東部、鐙瀬溶岩海岸を望む「五島リトリート ray」が向き合ってきたのは、食や自然、文化を通して、五島という土地を滞在の中で感じてもらうこと。
福江島という場所で、それぞれの方法から五島の魅力を伝えてきた両者。その出会いから、つくり手と料理人が互いの表現を持ち寄り、一杯と一皿を通して五島の風景を伝える、一夜限りの体験が生まれました。
静寂とやすらぎが守られた「半泊」の地
福江島の中心地から車で30分ほど。細く険しい山道を抜けた先に、「半泊(はんとまり)」という小さな集落があります。江戸時代末期、弾圧を逃れてきた潜伏キリシタンの一部がこの地にとどまったことから、その名がついたといわれています。
現在はわずか数世帯が暮らし、1922年に建てられた小さな教会が静かに海を見下ろしています。この地でクラフトジンGOTOGINをつくるのが、「五島つばき蒸溜所」の門田クニヒコさん、小元俊祐さん、鬼頭英明さんです。

「土地を表現するお酒」を、五島から
代表の門田クニヒコさんは、大手酒類メーカーで28年にわたりマーケティングと商品開発に携わってきました。50歳を前に、次第に「物語のあるお酒をつくりたい」と考えるようになったといいます。
「僕らが心惹かれるのは、土地に根ざしたもの、風土に近いもの。その上にある物語です。もともとお酒というのはそういうものだったはず」
声をかけたのは、32年間ウイスキーのブレンドや原酒開発に携わってきた鬼頭英明さんと、30年以上にわたって酒類のマーケティングに携わってきた小元俊祐さん。2022年、三人はそろって五島へ移住し、クラフトジンづくりを始めました。
選んだのは、製法や香りの設計に自由度のあるジン。目指したのは、単に五島の素材を使うことではなく、この土地で感じた風景そのものを香りや味わいとして表現することでした。

左から、小元俊祐さん、門田クニヒコさん、鬼頭英明さん
手間を惜しまず、風景を香りに変える
GOTOGINの特徴のひとつが、使用するボタニカルを個別に蒸留していることです。効率よりも、それぞれの素材が持つ香りや個性をどう引き出すかを優先し、ひとつずつ蒸留。その原酒を組み合わせながら、目指す味わいをつくり上げていきます。
そして、五島を象徴する素材として使われているのが椿の実です。島の暮らしと長く結びついてきた椿。その実が、高いアルコール度数の中にもやわらかな口当たりと穏やかな余韻をもたらします。
土地にあるものと向き合い、そこから何を表現できるのかを考える。その積み重ねが、GOTOGINという一杯につながっています。

印象派の絵画のように、味をブレンドする
ブレンダーの鬼頭さんは、その仕事をこう表現します。
「ウイスキーは水墨画のようで、ジンは印象派の絵画なんです」
半泊の海から吹く風、山の深い緑、磯や潮の香り。そして、この土地に積み重なってきた人々の暮らし。風景を前にして感じたものを手がかりに、一つひとつの原酒を絵の具のように重ねていきます。
定番のGOTOGINに加え、季節ごとに絵柄を変える「空よ雲よ」シリーズも展開されています。ラベルを彩るのは、数々のアニメーション作品で美術監督を務めた山本二三氏による空の絵画です。半泊の空や海を見つめながら生まれたお酒に、五島出身の山本氏が描いた風景が重なる。
GOTOGINには、さまざまなつくり手の視点を通して、五島の風景が幾重にも映し出されています。

異なる方法で、「五島」を伝える
半泊でGOTOGINがつくられている一方、島の南東部に立つ五島リトリート rayもまた、五島という土地と向き合ってきました。
五島近海の魚介や島の食材を生かした料理、椿や上五島発のスキンケア商品を取り入れたスパ、島の自然や文化に触れるアクティビティ。ホテルの中だけで完結するのではなく、その先にある土地や人、文化へと興味が広がっていくような滞在を目指しています。
GOTOGINが一杯のお酒から五島の風景を表現するなら、五島リトリート rayは、滞在という時間を通して五島を伝える。アプローチは異なっていても、「この土地にあるものを、自分たちなりの方法で届けたい」という姿勢には、重なるものがありました。
そこから生まれたのが、商品をホテルで提供するだけではない、つくり手と料理人による新しい試みでした。

一杯と一皿から生まれた、新しい五島の体験
2025年6月19日、五島リトリート rayで「一夜限りのGOTOGINコラボディナー」を開催しました。
この日のために、五島つばき蒸溜所の創設者三人と、五島リトリート ray料理長・山本祐輔が、それぞれの専門性を持ち寄りました。
料理長・山本が手がけた全5品のコースに合わせたのは、GOTOGINを使った5つのペアリング。食前酒には椿原酒をストレートで。前菜にはソーダ割り、造里には塩を添えたGOTOGINを合わせました。凌ぎにはギムレット、メインには「GOTOGIN meets Rouge」と名付けた、この日のためのスペシャルカクテルを。

五島リトリート ray 料理長・山本 祐輔
単に料理とお酒を組み合わせるのではなく、ひとつの素材や香りに対して、料理人とつくり手がそれぞれの視点から向き合う。その掛け合わせによって、五島の味わいを新しい角度から感じてもらうことを目指しました。
当日は五島つばき蒸溜所の三人も会場を訪れ、GOTOGINの成り立ちや蒸留の工程、素材への想いをゲストへ直接伝えました。半泊で生まれたGOTOGINと、五島の食材を扱う料理人。それぞれが持つ五島の解釈が、一夜の食体験として重なりました。

一杯から、その土地へ
「GOTOGINを知って、この場所に興味を持っていただいて、実際にどんな香りや味がするのかを飲んで感じてもらえたら」
鬼頭さんはそう話します。GOTOGINを飲んだことをきっかけに、その背景にある半泊という場所を知る。料理を味わったことから、食材を育んだ海や大地に興味を持つ。ホテルでの滞在から、島のまだ知らない場所へ足を延ばしてみる。
地域の魅力を伝える方法は、ひとつではありません。
五島つばき蒸溜所には、GOTOGINだからできることがある。料理人には、料理だから表現できることがある。そしてホテルには、それらの人やもの、物語と旅人が出会う場所をつくることができます。
私たち温故知新が大切にする「地域の光の、小さな伝道者」という考え方も、自分たちだけで地域の魅力をつくるということではありません。すでにその土地にある魅力や、それを生み出す人たちと出会い、互いの視点や専門性を持ち寄りながら、新しい体験へとつないでいくこと。
GOTOGINと五島リトリート rayがともにつくった一夜もまた、そんな関わり方から生まれた、五島の新しい伝え方のひとつです。






















