【壱岐リトリート海里村上】壱岐の恵みを、一杯に。クラフトジンに込めた島の物語:後編
更新日:2023 - 02 - 08
壱岐の魅力を、島の外へ届ける方法をつくりたい。
コロナ禍をきっかけに始まったプロジェクトから生まれた、クラフトジン「JAPANESE IKI CRAFT GIN KAGURA」。
前編では、壱岐焼酎をベースに、島で十分に活用されていなかった農産物などをボタニカルとして取り入れ、酒蔵、生産者、ホテルがそれぞれの知見を持ち寄りながら、一杯のジンを形にしていくまでをたどりました。
後編では、「KAGURA」という名前に込められた壱岐の文化、料理とともに楽しむための試み、そしてその後に生まれたクラフトジンまで、プロジェクトの歩みをたどります。
「KAGURA」という名前に込めた、壱岐の文化
島内に数多くの神社が点在する壱岐。
その神社で受け継がれてきた「壱岐神楽」は、約700年の歴史を持つ神事芸能です。壱岐の神社に奉職する神職によって伝承され、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

島の文化を一杯のジンにも表現したい。そんな思いから、このクラフトジンは「KAGURA」と名付けられました。ボトル中央に描かれているのは、男嶽神社に祀られる猿田彦命。ブルーのボトルデザインは、壱岐出身のスタッフが手がけました。
2022年12月には、住吉神社で行われた大大神楽にKAGURAを奉納。酒そのものだけでなく、名前やボトルデザインにも、このプロジェクトが生まれた壱岐という土地とのつながりが表現されています。

一杯のなかに重なる、島の素材
KAGURAの特徴のひとつが、壱岐で集めた多様なボタニカルです。イチゴや柚子、橙、アスパラガス、モリンガ、木の芽、ニホンミツバチの蜂蜜など、それぞれに異なる香りや味わいを持つ素材が使われています。料理長の大田誠一は、その味わいについて、
「華やかなフルーツの香りがあり、なかでもイチゴと柑橘を感じます。蜂蜜の芳醇な香りと甘さも感じます」
と表現します。一つひとつの素材をたどれば、その先には島の生産者がいます。
KAGURAは、壱岐の素材を集めるだけではなく、プロジェクトを通して出会った生産者や、それぞれが育てる素材とのつながりを、一杯のなかに重ねていったクラフトジンでもあります。

壱岐の料理とともに楽しむ
KAGURAの開発では、ジン単体の味わいだけでなく、料理とどのように楽しむかという視点も大切にしました。完成後には、クラウドファンディングの支援者を招いたペアリングディナーを開催。
呉豆腐や唐墨大根、貝やウニを盛り込んだ前菜にはストレートを。黒鮑やアスパラガスの天ぷらにはソーダ割りを。壱岐牛の炭火焼きには、柚子塩を添えてお湯割りを合わせました。デザートには、壱岐産ニホンミツバチの蜂蜜を使った自家製アイスクリームとKAGURAをストレートで。
一つのジンを、料理に合わせて飲み方を変えながら楽しむ。そこには、酒を造る酒蔵とは異なる、日々ゲストに料理を提供するホテルだからこその視点があります。
島で育った食材と、島の素材から生まれたジン。それぞれを一つの食卓でつなぐことで、KAGURAの楽しみ方も広がっていきました。

KAGURAから、その先へ
KAGURAの完成後も、クラフトジンづくりは続きました。
2023年には、生姜と柑橘を主役にした2nd editionが誕生。ボトルには、アスパラガスの切り落とし部分を原料の一部に使った和紙のラベルを採用しました。
2024年には、イチゴを中心に据えた「SHIMA」が加わります。第一弾のKAGURAから、素材や味わいを変えながら、これまでに3つのクラフトジンが生まれました。
共通しているのは、壱岐焼酎をベースに、島にある素材に目を向け、その特徴を一杯のなかで表現することです。
第一弾のKAGURAは、「オリジナルジン」と名前を改めて、現在もその味わいが受け継がれています。
名前を変えてもなお、当時出会った素材や生産者とのつながりはそのまま映し出されています。
(※2nd editionとSHIMAは現在完売しています)

(※2nd editionとSHIMAは現在完売しています)
素材を使い切り、島のなかでつなぐ
クラフトジンづくりを通して考えてきたのは、商品をつくることだけではありません。
ジンに使用したあとのボタニカルは廃棄せず、島内の有機農家へ肥料として提供。その畑で育った野菜を料理に取り入れるなど、素材を島のなかで循環させる試みも行われました。
壱岐の蔵酒造の石橋福太郎さんは、今後についてこう語っています。
「焼酎造りにおいて、お米は基本壱岐産ですが、麦はどうしても壱岐産だけでは賄えない部分があります。それでも、いずれは全て壱岐島内のもので造る『Made in 壱岐』を目指したい」

壱岐の蔵酒造代表・石橋福太郎さん
壱岐焼酎をベースに、島で育った素材を使う。生産者から受け取った素材を酒に生かし、その過程で生まれたものを、再び島のなかへつないでいく。クラフトジンづくりは、島にある素材の新たな生かし方を考える機会にもなりました。
一杯から、壱岐という土地へ
KAGURAの始まりにあったのは、コロナ禍で人の往来が途絶えるなか、「壱岐の魅力を、島の外へ届ける方法はないだろうか」という問いでした。そこから酒蔵とともに島の生産者を訪ね、素材を探し、蒸留方法を考え、料理との楽しみ方をつくる。
KAGURAから始まったクラフトジンづくりでは、素材や味わいを変えながら、これまでに3つのクラフトジンが生まれました。その過程で重なっていったのは、壱岐の蔵酒造が培ってきた技術、生産者が育てた素材、そしてホテルが持つ食の知見です。
一杯のジンから、その素材を育てる人へ。酒を造る人へ。そして、その背景にある壱岐という土地へ。「壱岐の魅力を、島の外へ届けたい」という思いから始まったこのプロジェクトは、島にあるものをあらためて見つめ、その魅力を伝えるひとつの形となりました。

















