TW Island Guideで五島リトリート ray/壱岐リトリート海里村上が紹介されました
TW Island Guide (sister mag to Tokyo Weekender)で五島リトリート ray/壱岐リトリート海里村上が紹介されました。
TW Island Guide (sister mag to Tokyo Weekender)で五島リトリート ray/壱岐リトリート海里村上が紹介されました。
日経電子版 SPIREの「京都・嵐山の地で唯一無二の景色と美食を味わう。」記事でMUNI KYOTOが取り上げられました。
https://ps.nikkei.com/spire/article/lifestyle/li-65.html
瀬戸内リトリート青凪では、2022年12月1日(木)~2023年1月31日(火)の2か月間、現代アートの中でも最新技術として注目を集めるNFTアートプロジェクト“BANANA X”を展示いたします。今回は愛媛在住の気鋭アーティストtsumichara氏とのコラボレーションが実現。地域の気鋭アーティストやクリエイターとのコラボレーション等を通じて、「地域の光」を見つけ、それを届けて参りたいと考えております。
■展示日程
期間:2022年12月1日(木)~2023年1月31日(火)
場所:瀬戸内リトリート青凪 ギャラリー
〒790-2641 愛媛県松山市柳谷町794-1
ご宿泊者以外で鑑賞をご希望の場合は事前にお問い合わせください。
■作品とアーティストについて
作品名 :BANANA X
制作年 :2022
サイズ :606mm × 606mmが4枚
額縁の有無:無
題材となったのは2019年、アート・バーゼル・マイアミで、壁に貼られたバナナ「Comedian」。
このただ“壁に貼られたバナナ”が12万ドルで落札されたことから着想を得ています。現在のNFTムーブメントと「Comedian」を重ねあわせることで、作品の背後にあるメッセージを鑑賞者に想像させ、またNFTを介してアートの当事者としても参加できるようデザインされました。このプロジェクトを通して日本各地、世界中でコミュニティメンバーを増やすことを目的として、“旅するバナナ”と題して各地を巡ることもプロジェクトの一貫。愛媛を皮切りに、青森、徳島、京都、沖縄、大阪、東京とバナナを旅させるプランが進行中です。
詳細はこちらをご覧ください: https://banana-x.studio.site/
<アーティストプロフィール:tsumichara>
大学では数学を、大学院では経営学を専攻。コンサルティングファームに勤務した後、起業。2019年より経営の傍らアーティスト活動を開始。2021年、社長退任と同時に東京から愛媛に移住。アーティスト、デザイナーとして活動中。
■NFTについて
「NFT」とは、ブロックチェーン技術を活用することで、デジタルデータに対し唯一無二な資産的価値を付与し、新たな売買市場を生み出す技術のことで「Non-Fungible Token」の略語です。NFT化されたアートにはトークンIDが付与され、作成者・所有者・権利者・取引履歴といった情報も同時に記録されます。これにより複製が難しくなりデジタルアートの唯一性が証明されます。
■“BANANA X”について
NFTを活用したアートプロジェクトです。キャンバスに描かれたアートの区画をNFTで分割販売。NFTを購入すると、キャンバスの共有持分権が得られます。アートの共同保有者は、NFTやアート、地域カルチャーなどお互いの興味関心について議論し合えるコミュニティを形成。コミュニティ内から、新たなプロジェクトが立ち上がることも見込まれます。また、保有者は、キャンバス販売前からファンとして作品のマーケティングやブランディングに関与。フィジカル(現物)とデジタル(NFT)の両面から新たなアート体験ができます。
<展示に関するお問い合わせ>
瀬戸内リトリート青凪
Email: [email protected]
公式サイト:https://setouchi.by-onko-chishin.com//
<プレスリリースURL>
https://www.atpress.ne.jp/news/332078
<取材に関するお問い合わせ>
[email protected]
普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)
いまや、私たちの生活にかかせない『ガラス』ですが、その歴史は古く、今から 5000年ほど前に、人類がつくった物質であるといわれています。日本でも太古からガラスの成形・加工が行われていましたが、ガラス文化が花開いたのは16世紀半ば以降。海外との貿易の玄関口として発展してきた長崎の地にポルトガルからその技術や工芸品がもたらされ、全国に広がっていきました。
ガラスと縁が深いこの地で、ガラス文化を伝える2人のガラス職人に出会いました。ガラス工房を40年以上営む長崎市の『瑠璃庵』、五島列島で唯一のステンドグラス工房『538 ステンドグラス工房』です。ガラス文化が伝わったこの地で紡がれる、輝く手仕事をご紹介します。
じめっと蒸し暑い陽気で、梅雨もいよいよ本番かという6月の昼下がり。長崎市内でガラス工房を営む瑠璃庵を訪ねました。
「ちょっと、暑いんですけど…」
少し申し訳なさそうに工房兼お店に向かい入れてくれたのは、ガラス職人の竹田 礼人(あやと)さん。工房とショップが併設された店舗の奥には、職人さんたちが汗を流しながら”吹きガラス”の製作に取り組む姿が。ガラスを溶かすための大きな”溶解炉”は絶え間なく火を炊いており、1000度を超える熱さです。長崎・五島列島にあるホテル『五島リトリートray』では、オリジナルの器やグラスの製作をお願いしており、客室やレストランで使用しています。今回はその製作風景を見学しにやってきたのですが、工房の熱気がお店の端まで伝わってきました。
ガラス職人の竹田 礼人(あやと)さん
炉に入れては取り出し、空気を吹き入れ形を変え、何度もガラスを重ねて作る吹きガラスの作品。窯の近くはまるでサウナのようで、じっとしているだけでも汗が流れ落ちてきます。
「うどんやそばを打つ人が、日によって毎回素材の様子が違うと言いますが、ガラスも同じです。ガラスは温度が下がると割れてしまうため、冬は炉の外に出して整形できる時間が短い。逆に夏場は、外に出しておける時間は長いけれど、暑さとの戦いです。熱を持ったガラスは1000度以上あるので、汗が一筋垂れるだけでガラスが割れてしまう。それほど繊細で、同じものはひとつもないんです。」
「瑠璃庵の特徴は、砂を溶かしてガラスをつくるところからやっていることです。最近の主流ではガラスの塊を溶かしてつくる人も多いし、その方がガス代なども安上がりなのですが、ガラスの原材料からこだわることで、美しさを引き出しています。」
そう語りながら見せていただいたのは、ふかふか、サラサラの美しい”砂”。これが、ガラスを作るための最も大切な原料の1つです。現在は、タスマニア産の珪砂(けいしゃ)を使用しているそうですが、江戸時代などのガラス職人は、日本の海岸の砂を使っていたそうです。
「砂に、色々な成分をいれて透明度を出しているのですが、元の砂が良くなければどうにもなりません。日本の砂もこんな風に美しかった時代があったんですね。現代ではもう汚くて使えなくなってしまいました。世界的にも、美しい砂が取れる場所がどんどん消えています。地球の美しさとガラスの美しさは、いつも隣り合わせなのかもしれません。」
普段、なかなか目にすることのない、ガラスの”原料”。美しい海の砂から作られるということを知ると、ガラスの水のような透明感やきらめきの秘密が、わかったような気がします。
「ガラスは、海から生まれているんですよ。」
竹田さんの言葉が、なんともロマンティックに聴こえました。
「瑠璃庵は、父と私、親子二代でものづくりをしていています。もともと父は、建築系の仕事をしていたのですが、37歳の時に会社を辞めて、日本で初めてのガラスの大学に通いなおし、一からガラスについて勉強して瑠璃庵を創業しました。その頃、長崎で販売されていたガラス製品やお土産は、ほぼ海外製のもので長崎で作られているものは、ほぼなかったそうなんです。」
長崎のガラス文化が失われていた…そんな事実を目の当たりにしたお父様の竹田 克人(かつと)さん。”長崎のガラス工芸に再び火を灯したい”そんな想いを抱き、導かれるようにガラスの世界に飛び込みました。現在、お父様の克人さんはステンドグラス職人として、息子の礼人さんは吹きガラスの職人として活動しています。今では、世界遺産にも登録されている長崎市内の『大浦天主堂』の修復を手がけるなど、確かな腕前と熱い想いで、長崎のガラス文化を伝えています。
「長崎でやるというのが、一番のこだわりであり、意味があると思っています。生まれた土地だし、歴史もあるし、ここしかない。」
「長い間、同じ場所に工房を構えていると、嬉しい出来事もあります。修学旅行生でガラスづくりを体験した子が、先生になって自分の教え子を工房に連れてきてくれたんです。“当時のあの感動を忘れられなくて、教え子にも体験させたい。今もその作品をもっている”と話してくれて。そうやって、ガラスを通じてモノや想いが続いていってくれているのを実感しました。モノには必ず、思い入れやエピソードが宿ります。手作りで作ったモノだからこそ、大切にしようと思ってくれたり、何か感じ取ってもらえるものがあるんじゃないかと、信じています。」
“大切にしたくなるもの”、それは、使うたびに作り手の顔が思い浮かんだり、自分の思い出にそっと寄り添ってくれるものではないでしょうか。丁寧に作られた瑠璃庵のガラスの作品たち。ガラスの先にいる職人さんたち、あるいは、ガラス文化を伝えた太古の人々に想いを馳せながら、長く大切に使っていきたいと感じます。
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【ガラス工房:瑠璃庵】
住所:長崎県長崎市松が枝町5-11
TEL:095-827-0737
営業時間: 9:00-18:00
休館日:毎週火曜日
HP:http://www.rurian.com/
Instagram:https://www.instagram.com/rurian_glass_studios_inc/
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穏やかな海の目の前に、ポツンと佇むレンガ造りの建物。福江島の北西部に位置する三井楽町というエリアに、島唯一のステンドグラス工房があります。ガチャリと扉を開けると、小柄な女性が大きな色ガラスと対峙する姿が。真剣なまなざしに、思わず息を飲みます。
『538 ステンドグラス工房』の濱崎由美子さん
出迎えてくれたのは、島でステンドグラスの製作を行う『538 ステンドグラス工房』の濱崎由美子さん。たくさんのガラスやパーツに囲まれた空間は、手仕事の臨場感を感じられ、なんだかわくわくしてきます。
工房がスタートしたのは、今から25年前。五島出身の方が工房を開き、当時、同エリアにある「三井楽教会」のステンドグラスを製作するという大きなプロジェクトが進行していました。
「教会といえば、ステンドグラスのイメージがあると思うのですが、三井楽教会には一切なかったんです。正確にいうと、1代目の教会にはあったのですが、建て替えで2代目になった際になくなってしまったようです。工房をはじめられた方が『とても寂しい、やっぱり教会にはステンドグラスがほしい』と感じていらしゃって。そこから、プロジェクトが立ち上がりました。」
工房がスタートしてから約一年後、濱崎さんは工房の生徒さんとして、活動に加わります。当初は、自宅のドアの一部にステンドグラスを飾りたいと考えており、個人的な製作をするために生徒募集の張り紙をみて参加をしたそうです。
「私が参加した時、既に三井楽教会のステンドグラスの製作の話がありました。メンバーは9名、私含めキリスト教の信者さんは2人しかおらず、全員ステンドグラスやガラスの知識もない初心者。大阪から先生を呼び、0から教わりながらの製作です。基本的にはボランティアとしての活動だったので、各々が空いている時に進めました。その頃私は市役所の職員だったので、仕事が休みの土日を利用し参加していました。5年で完成させる予定で、最終的には6年かかりましたね。」
ステンドグラスの製作は、細かいデザインに合わせガラスをカットしたり、気の遠くなるような作業もあれば、ケイムというガラスを嵌め込む固い鉛線をグイッと曲げるような力仕事も必要です。デザインに合わせてミリ単位で調整をしていきます。
「もちろん不安もありました。教会に納める予定のステンドグラスは、全部で34枚。仕事もしながらだったので、5年も続けられるかな、と。でも、1枚完成させるとマインドが変わりました。完成させる喜びを体感した時、本当に疲れを忘れましたね。ああ、綺麗だなあと心が動きました。」
三井楽教会のステンドグラスには、キリスト教の歴史、日本、そして五島のキリスト教の歴史が表現されています。その場所に宿るストーリーをガラスに込めて作られた大作のステンドグラスは、今や街の立派なシンボルです。
工房を立ち上げた方は、三井楽教会の作品の製作期間中に身体を悪くされ、完成を見届けることなくこの世を去ってしまったそう。その後、工房では濱崎さんが中心となり、教会のステンドグラスの修復や制作を手がけています。それまでデザインやものづくりについて学んだことがなかった濱崎さんでしたが、いちから技術や知識を勉強し、現在は五島のお店などから、デザインからオーダーメイドでの製作の依頼もあるそうです。
「思い出深い製作があるんです。2011年、東日本大震災のあとのことでした。岩手県に住むカトリック信者の方から一本のお電話があって、話を聞くと津波で家から何から全て流されてしまったと。失意のどん底に落ち、これからどうやって生きていこうと思っていた時、五島へ旅した際に見た、教会の美しいステンドグラスの光景が頭に思い浮かんだそうです。『希望だ。これがあれば、私は生きていける、と思って…家に飾りたいんです』とおっしゃって頂いて、なんとか力になりたいと思いお受けしました。」
東北という遠距離からの依頼ということもあり、難易度が高いオーダーでした。それでも「ここにもあった、復活支援!」を合言葉に、粘り強く密に連絡を取り合い、4枚のステンドグラスを制作し岩手に送り届けたそうです。
「ステンドグラスは、まだ文字が読めない人々が多かった時代に、色や形で想いやその意味を伝える役割を持っていました。ガラスの色や表現されている形、全てに意味が込められています。
岩手の方に何を作ろうかと考えていた時に、ふと浮かんだ言葉が『天地創造』でした。教会のマリア様に守って頂けるようにマリア様を描き、”入口”を現す虹、”精霊”を現す鳥を描いたりなど、嵐は去ったよ、平和がやってきたよ、という想いを込めたんです。」
届ける人に想いを馳せながら、ひとつひとつのモチーフや色に意味を宿したステンドグラス。美しいガラスが人々を魅了するのは、作り手のささやかな祈りが、細部まで込められているからなのかもしれません。
市役所の職員をやりつつ、ステンドグラスの製作をしていた濱崎さんは、今から15年前、ご自身が55歳の時に職場を退職し、工房の仕事に専念をするようになります。現在は、製作のかたわら、観光客向けにステンドグラスの製作体験も行っています。
「自分の持っているもので、何かに貢献できたらという想いはあります。これからも、作り続けていきたいですね。いつまでできるかな…」
淡々と静かにガラスと向き合い、こんなにも大変な作業を何気ないことのように、少し控え目に、はにかみながら語る濱崎さん。自宅のドアのガラスを直したいという想いからはじまり、今や島の美しい文化を繋ぐガラス職人に。いくつになっても、ひたむきにやり続けることが、ライフワークにつながるということを、教えてくれたような気がします。
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【538 ステンドグラス工房】
住所:長崎県五島市三井楽町濱ノ畔806-9
定休日:不定休
※五島リトリート rayでは、アクティビティとして、ステンドグラス作り体験を行っております。体験ご希望の方はホテルまでお問合せください。
五島リトリート ray:0959-78-5551
詳細はこちら
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KEIRIN HOTEL 10にて、競輪選手と共にバンクの走行体験やトークセッション、バックヤードツアーなど、様々な競輪のコンテンツを組み込んだ「競輪&宿泊型研修」を2022年10月16日(日)〜17日(月)の1泊2日で行いました。「実際にバンクを走ってみてとても気持ちがよかった」「実際に選手が走行している姿を間近で見てみたかった」など、参加いただきました連合岡山東部地域競技会(参加者25名)様の意見を参考に、今後も日本唯一のスタジアム一体型のホテルならではの類のない体験を通して、競輪場を盛り上げるイベントの開催を目指していきます。
普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)
旅の醍醐味に、「地域の”ものづくり”に触れること」があります。その土地で生まれた必然性が宿る地域の手仕事。技を今に輝かせる職人達の手によって磨かれ、この地ならではの気づきを私達に与えてくれます。
私たちのホテル「五島リトリート ray」では、コンセプトのひとつに「local crafts」(地域の光)を掲げており、地域作家によるクラフトたちが、rayの空間を彩ります。五島の
素材を活かしながら、オリジナリティ溢れるものづくりを行う地域の作り手の声に、そっと耳を澄ませていただければ嬉しく思います。
自然豊かな五島列島には、バリエーション豊かな樹木が自生しています。そんな木々を活用して作品づくりを行うのは、木工作家 wan -made in Gotoislands- の坂口喜人さん。木のぬくもりを感じながらも、シャープで凛とした佇まいが特徴的な坂口さんの作品にひと目で引き込まれ、現在ホテルのspaとショップで取り扱いを行っています。
wan -made in Gotoislands-
「9年ほど前に、名古屋から五島へUターンをしてきました。高校卒業後に島外に就職したのですが、都会の喧騒に疲れて戻ってきたところ、島の”間伐材”の多さに気づきました。引き取り手のいない間伐材は捨てられていくしかなく、勿体無い。何かに活用できないか。そんなことを考えている最中に出会ったのが、フィンランドの伝統工芸品である “ククサ”という木製のマグカップでした。」
坂口さん
最初は別の仕事をしながら作品づくりを行い、地元のマルシェへの出展や、カフェでの委託販売など、小さく活動をはじめた坂口さん。その後、当時の仕事を辞めたタイミングで、本格的にものづくりをしてみようと考えたそうです。さまざまな木工に触れたり、動画サイトで作り方を独学で勉強しながら、現在のスタイルを確立していきました。
「フィンランドのククサは白樺の瘤の部分で作られていて、非常に野生味がある印象ですが、これをもっと普段使いしやすく日常に馴染むものを作りたいと思ったんです。人々の生活に欠かせない食器を、シンプルに力強く、でも、どんな場面にも合うように。そこにあるのが当たり前かのようなデザインに仕上げました。」
デザインから製作まで、全て自身で行う坂口さんの作品は、既視感のない個性的な佇まいが魅力です。現在では、三越伊勢丹でPOP UPを行うなど、島外からも注目度が高く、五島発のウッドテーブルウェアブランドとして、じわりじわりと名を広めています。
「以前は島外の木材も希少性の高いものは積極的に使用していましたが、現在は島内の間伐材をメインとし、島外や産地不明の物に関しても解体現場から出てきた物など、循環を大切にしています。
伐採後は自身の工房で3~5年、自然乾燥させています。その後、乾燥状態を見極めて細かく製材していきます。ククサは箱型の状態にした木材から一発の削り出し。この時に個性豊かな木目が出るように木取りが出来るのは、自身で丸太を製材できる環境にないと難しい事なので楽しみの一つでもあります。手にとって頂く方にも、どんな木目のものにするのかを選ぶ楽しさを感じていただけると嬉しいです。」
「活動をはじめてしばらくすると、多方面から”木を切って欲しい”と連絡をいただくようになったんです。切り方を父に教わって、自分で切りに行くようになりました。特に、台風後にはよく電話が鳴ります。土地柄、台風も多いので木が倒れてしまうことも多々あるので、そんな時に声をかけてもらいます。」
台風のエピソードは五島ならでは!と思わず関心してしまいました。地域の困りごとを、ものづくりにポジティブに活用していく。とても素敵な作品作りの在り方だと感じます。現在、坂口さんの作品では、サクラ、タモ、シイ、カエデなどの木を使用しており、ひとつのカップや食器を通じて、五島の自然の豊かさが伝わってくるようです。
「作品づくりをしていると、木も生き物なんだなと実感します。削っていると中に虫が住んでたり、ひとつひとつ表情や柔らかさも異なっていて、個性もある。たまに、すごくテンションが上がる木に出会うこともあって、こんな木目が良い木が島にあったんだなと驚いたりもします。もっと美しくしてやるぞ!と思いますね(笑)」
「私の作品で、レジンを混ぜて削り出したシリーズがあります。愛する五島の海中を表現した、ちょっと遊び心を入れた作品です。wanの工房は福江島のシンボルでもある鬼岳の麓にあるのですが、上水も通っていない地域に所在しています。生活用水は地下に雨水を溜めるタンクを設置し濾過していて、降雨が少ない時期は貯水がゼロになり近くの湧水を汲みに行く事も多々あります。 たくさんの自然の恩恵を受けて生活していますが、生きていく上では、どうしても犠牲も出してしまいます。レジンのシリーズは売上の一部は、自然保護活動団体へ寄付していて、これは私なりの自然への感謝の気持ちと、烏滸がましいですが、お返しだと考えています。」
自然の中で暮らしながら、循環を大切に、環境に対して敬意を払いながら木と向き合う坂口さん。そんなマインドで生み出された五島ならではの作品は、使っているうちに私たちの暮らしにやわらかく溶け込み、使う度に五島の自然へと心が帰っていくような気がします。
五島列島には、木の他にも地域にある素材を新しい解釈で見つめ、ものづくりをしている職人がたくさん存在しています。”モノにはふるさとがあり、その土地で生まれた理由がある。ぜひ五島リトリート rayで、そんな職人たちの魂のカケラに触れていただければ幸いです。
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wan -made in Gotoislands-
HP:https://wan-madein-gotoislands.jimdofree.com/
オンラインショップ:https://shop.wangoto.net/
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普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)
島を訪れると、スーパーや土産物屋で、多くの”お茶”を目にします。五島茶と呼ばれる緑茶から、五島の名産である椿の葉を使った「つばき茶」、他にも五島産のレモングラスを使ったお茶まで。その豊富なバリエーションから、昔からお茶が盛んだったと思いきや、お茶の生産がしっかりとはじまったのは、今から25年ほど前。ひとりの立役者の存在がありました。
ホテルのショップや客室で取り扱っている五島のお茶
島でお茶の生産から販売までを手がける、「有限会社グリーンティ五島」。緑茶をはじめ、緑茶を発酵させた和紅茶、椿の葉を使ったつばき茶など、100%オーガニックにこだわった商品を全国へ届けています。そんな会社の社長、入江 稔雄(いりえ としお)さんは、五島列島のお茶の生産の礎を築いた第一人者。焼けた肌と力強い五島弁が、パワフルな印象です。福江島で生まれ育ち、高校を卒業をした後、父親と同じ畜産業へと進みますが、お茶の生産に関しては未経験だった入江社長。なぜ、お茶の栽培をはじめたのでしょうか。
「茶畑は、今から25年前の平成9年にはじめました。お茶の生産自体は、そのさらに15年前くらいには行われていたのですが、台風災害や後継者の問題などで、しばらく廃園になっていたんです。その頃、島の産業として養蚕産業が一気に盛り上がった時期があり、県内最大の養蚕団地があったほど。しかし、海外産の低価格繭の流入が増え価格は下がり、養蚕農家も高齢化。みるみる衰退していきました。仕事がなくなり、どんどん島の外に人が流出していってしまったんです。どうにかして、五島の新しい産業をおこし雇用の場を作らんばいけん、と思ったのも、お茶づくりを始めた理由の一つでした。」
畑がよく似合うグリーンティ五島の入江社長
「島では、耕作放棄地が増え続けています。ほったらかされてしまった土地は、どんどん土が悪くなっていく。そうなると、土の体力がなくなり美味しいものが作れなくなってしまうんです。また、『山が荒れれば海が荒れる』という言葉があるように、農業の衰退は、海にまでも影響を及ぼします。”これじゃいけん。島のためにひと肌、ふた肌もぬがんばいかん。”そう思って、耕作放棄地を茶畑として蘇らせていく取り組みをはじめました。」
経験のないお茶作りにチャレンジをしながら、「生産と同時にお茶屋(現在のグリーンティ五島)までやらないと、五島の経済がまわっていかない」と考え、栽培から販売まで、全てを自ら手がけることに。五島で作られた緑茶『五島茶』は、その確かな美味しさが口コミで広まり、他の地域へと販路が拡大していきます。
「知り合いに紹介され、静岡の茶商を訪ねた時があります。五島のお茶を出したら、”こんなお茶は飲んだことがない。この旨味と甘味はなんですか?”と驚きながら言われたんです。おそらく、堆肥と島の潮風が運ぶミネラルが、お茶を美味しくさせたのでしょう。そこから静岡の茶商との取引が始まっていきました。」
茶商も驚くほどの美味しさと、五島の風土が育んだ特異性を武器に、販路を徐々に増やしていきました。しかし、その後、産地表示義務化の波に揉まれ販路は縮小、ペットボトルの普及などで需要は落ちていく。そして、温暖化や台風の被害も一気に続き、苦しい時期を迎えます。
「いきなり売上が1/10、1/20に落ちていって、トラブルも起こる。肥料のお金も払えない。自分も家族もスタッフも意気消沈して、会話もなかったです。そんな、どうしようもない時にオーガニック農法に取り組む地元の人と出会い、もう一度、原点を見つめ直すことができたんです。
自分らの本当の原点にもどらんば。我々農家というのは、消費者に安心・安全・おいしさを届けるのが役目。それを自分は忘れておった。原点に戻ろう、と。教えてもらった有機農法を続けていくと、お茶も徐々に蘇っていき、さらにまろやかになっていきました。これしかない!と思いましたね。」
現在では、最も基準が厳しいとされる「EU(欧州連合)」の残留農薬基準もクリアし、有機オーガニック認証を取得。厳しい時期を乗り越え、消費者へより良い商品を届けながら、自分たちも胸をはって誇れるものづくりへと、歩みを進めていきました。
震災以降、中国産のお茶が流入し、お茶の価格が暴落。その頃、五島列島では島の特産物を作り活性化につなげたいという動きがありました。素材として注目されたのが「椿の葉」でした。古くから椿が自生し、現在も栽培が盛んであった椿を活かせないか、入江社長にも相談が持ち込まれます。
「最初は、エグくて口に入っていかなかったんです。頭を抱えながらも試行錯誤の末、椿の葉と緑茶を混合発酵させる世界初の製茶法で”五島つばき茶”を生み出しました。つばき茶を、県の農業試験場に出してみたら、日本人の成人病の効果があるような、驚きの成分も出てきたんです。美容や健康効果も確認され、今や、五島の大切な地域産物の1つになっています。」
新たな地域産物を作るために、奔走した入江社長。「つばき茶で生産者の生活を支え、島に人を呼び戻すきっかけになれば・・・。」そんな想いが、彼の胸の内にはありました。
「近年、地球温暖化や台風など異常気象の影響で、お茶を育てるのがどんどん難しくなってきています。せっかく頑張って育てても、ダメになる。現場も疲弊してしまいます。”とにかく南方の品物が必要だ”と思い、色々調べた末に、レモングラスにたどり着きました。」
お茶っぱに続く第二の”柱”を作るべく、南方系の素材、特にハーブなどを検討していたところ、知人からレモングラスは島に雑草でも生えていて、越冬していることを教えてもらったそうです。現在のオーガニック農法と堆肥土づくりが、レモングラスにマッチし、美しい色をした香り高いレモングラスの栽培に成功。入江社長は、島の未来を見据えつつ、再びこの地ならではの素材を生み出しました。
入江社長の挑戦の真ん中には、いつも島のため、島の豊かさや経済を守るという信念があります。そんな彼に、島の豊かさとは何か?と質問を投げかけると、こんな答えが返ってきました。
「それは、”経済と心”だと思います。いつでも向上心を持っていること。みなさんの活気、やる気が必要です。私が生きている間に、この島はいい島だと、若い人に自信をもたせんばいかんと思っています。地元に自信があれば、出ていこうとは思わないはずです。そのためには、外から来た人に、どんどん島の素材を磨いて美しくして、価値を高めて売り込んでいって欲しい。地元の人には、原石がわからなくなってしまっているんです。お互いにアイデアを出し合って、私たち生産者にもどんどん注文をつけてほしい。我々は、いくらでもいい素材を作って、それに応えていきたいと思っています。」
全ては、島の未来を見据え、次の世代に島の豊かさを繋ぐために。耕作放棄地を茶畑に、そして椿茶の栽培、新たにレモングラス生産へのチャレンジ。バイタリティ溢れる入江社長の姿からは、地元への深く大きな愛情と、ものづくりへの情熱を感じます。お茶から島を変えていく、グリーンティ五島の取り組み。次はどんな難題をクリアし、新たなチャレンジをしていくのか・・・今後も目が離せません。
有限会社グリーンティ五島
長崎県五島市吉久木町1179-2
Instagram:https://instagram.com/greentea_goto
普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)
五島の魅力とは?と聞かれると、美しい海、歴史深い文化、温かな島の人・・・色々なキーワードが頭に浮かんできますが、中でも、驚きと感動が詰まっているのが「食」ではないかと感じます。島の直売所には、みずみずしい野菜やフルーツが毎日並び、スーパーで買うお魚もとっても新鮮で、身は引き締まり旨味たっぷり。島外出身の私は、「身近な食材がこんなに美味しいなんて!」と、島の食材を口にする度に五島の豊かさを噛み締めています。(農家さんにお話を聞いたところ、潮風が運ぶミネラルが素材を美味しくするのだとか…!)
そんな、食いしん坊にはたまらない地、五島列島。たくさんの農作物が育てられている中で、今、都市部のレストランやホテルのシェフからも熱い視線を注がれる食材があります。それが、五島の「パプリカ」です。
パプリカの栽培を行うHPIファームの皆さん
肉厚でジューシーな実は、噛めば噛むほどみずみずしく、苦味や青臭さが一切ありません。まるで、フルーツを思わせるような優しい甘み。私たちのホテル五島リトリート rayでも、五島のパプリカを使用しており、日々レストランのメニューで活躍してくれています。そんなパプリカの栽培に取り組んでいるのは、地元の会社『HPIファーム』。「五島パプリカのファンを増やしたい!」という想いのもと、ひたむきに野菜づくりに取り組む生産者の日常を、取材しました。
お話を伺ったのは、HPIファームに勤める小野寺 克哲さん。小麦色に焼けた肌がよく似合い、すっかり五島ご出身の方だと思っていると、「実は、東京生まれ東京育ちなんです」と、意外な返答が。
「2021年の11月まで、親会社の(株)ディーソルに勤めていました。もともと、社長が五島の出身だったこともあり、五島でも東京でも事業を行っている会社です。昨年、定年退職を迎えたのですが、長年一緒に仕事をしてきた社長に相談し、第二の人生を五島でスタートしようと思い、移住を決意しました。」
「弊社の社長は、東京でIT企業を立ち上げたのですが、もともと社長が五島出身ということもあり、五島にも会社の拠点を設けています。ただ、その親会社も五島の拠点も、基本的にはITの事業を行っていて。農業とは関係のない領域でした。そんな中、2016年に、行政の方から、島内のワイナリーのワイン作りのために、ぶどうの生産者を探しているという相談があって。社長は、故郷のために力を尽くしたいと考えたのでしょう。全く未経験者の集まりながら、ワイナリーのための5ヘクタールの葡萄園を作ったんです。」
「それまで、島内だけでは生産力が足りず、一部のぶどうを山梨などから買ったりしていたそうです。みんな、やっぱり五島産で作りたいという思いがあったんですね。しかし、ぶどうは育つまで時間がかかるので、他の食材を育てようとはじまったのが、パプリカでした。また、島では、農業をやる人が減り、耕作放棄地が増加して山が荒れてしまっています。そんな土地を引き受け、土地を再活用して、色々な作物の栽培に取り組んでいるのもHPIファームの特徴です。」
通常、パプリカの収穫時期は6月~9月頃、夏の時期が旬ですが、HPIファームのパプリカは栽培するパプリカのビニールハウスの温度を暖かく保ち、1年中収穫ができるよう工夫をしています。中でも特徴的なのが、一部の畑のエリアでは、湧き出る温泉熱を活かし、ビニールハウスの室温を保っていること。通常、重油をつかって、ビニールハウスの温度調整を行うことが多いですが、自然のエネルギーを活用することで、環境に優しい形で栽培を行えます。
「4〜5年ほど前まで、日本のパプリカの約90%が韓国産、4%がニュージーランド産だったそうです。近年は、少し国産の比率が上がってきているものの、まだまだ海外産が多い現状です。温泉の熱を活かしいつでも収穫できるようにすることで、五島の美味しいパプリカが少しでも多くの食卓に届けられると良いなと思っています。」
HPIファームでは、パプリカ以外にもこの6年の間に様々な素材を育ててきました。ブロッコリー、ミニトマト、高菜、空豆、かぼちゃ、さつまいも、マンゴー、びわ・・・・。中には、うまく育たなかったものもたくさんあり、農業未経験者ばかりで行うものづくりは、毎日がトライ&エラーの繰り返しでした。時には、他の農園さんに電話でわからないことを尋ねたり、思考錯誤の積み重ねです。
「愛情かければ良いものができるから!」を合言葉にやっています、と小野寺さんははにかみながら語ってくれました。
「最近では、ふるさと納税で毎年リピートして買ってくださるお客様も出てきています。こんな風に、しっかり産地のこと、私たちのことを知って買ってくださる方を、もっと増やしていきたいですね。特に、五島列島は離島という立地柄、もともと流通の面ではとても不利な条件なんです。輸送コストや時間、どれをとっても本土の地域に比べれば高くつきます。だからこそ、しっかりと美味しいもの、クオリティの高いものを生み出して、価値があるものにお金を払っていただく。この島ならではの作物を作り、農業を起点に島を盛り上げていきたいと考えています。」
まだまだ手探りのことも多い日々の中、しっかりと五島の農業や食の未来を見据える小野寺さん。食材が私たちの元に届くまでには、生産者の努力や知恵と工夫が、その裏には存在していることを、忘れないでいたいです。
農業法人 株式会社HPIファーム
http://www.hpi-farm.co.jp/
長崎県五島市下大津町712番地26
「KEIRIN HOTEL10」内のレストラン「FORQ(フォーク)」では、 食事が10%OFFになるお得なキャンペーンを開催します。 クラフトビールや瀬戸内の食材を使ったスパイス料理やオリジナルスイーツを提供。 瀬戸内海やバンクを眺めながらお食事をすることができます。ご宿泊はもちろんですが、お食事だけもご利用いただけますので、ぜひ 瀬戸内の旅にご利用ください。
● Restaurant “FORQ”
https://keirin.by-onko-chishin.com/restaurant-forq/
普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。
【vol.15】から、数回に渡り、五島列島にまつわる連載を配信しております。この夏新しく開業した五島リトリート ray。五島列島の”地域の光”をご紹介していきます。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f ・KEIRIN HOTEL 10・五島リトリートray)
この夏、五島列島には、2つの新しいホテルが同時期に開業しました。私たち五島リトリート ray、そして、カラリト五島列島。2年前の2020年にはhotel souというデザイナーズホテルがオープン。近年五島では、それぞれカラーの違った新しいホテルが立ち上がっています。
左から五島リトリート ray/カラリト五島列島/hotel sou
コンセプトも大きく異なる私たちのホテルですが、共通点は「地域の案内人」であること。3つのホテルの仕掛け人が集まり、これからの五島や観光の未来について、トークセッションを行いました。hotel sou共同代表 桑田隆介さん、カラリト代表 平﨑雄也さん、五島リトリートray 支配人 西浦圭司さんの対談の様子をお届けします。
ーーー2020年4月に開業した「hotel sou」。築50年以上の建物をリノベーションして作られました。設計は、 建築家 谷尻誠・吉田愛率いるSUPPOSE DESIGN OFFICEが担い、廃墟のような雰囲気の中、五島の地域性を捉えながらも、これまでにない斬新なデザインホテルです。2年前はまだ福江島自体にも、デザイン性にこだわったホテルが少なかった中で、大胆なチャレンジをされたhotelsou共同代表の桑田さん。ホテルの先輩でもある桑田さんに移住のきっかけやホテルの立ち上げについてお聴きしました。
hotel sou共同代表 桑田隆介さん
桑田:「もともと私は対馬の出身で、父の出身が壱岐、母の出身が対馬なんです。大学からずっと東京にいて、社会人になってからはアパレルの仕事に就いていましたが、長崎の島々にルーツもあったのでいつか長崎の島で何かしたいという思いはありました。
はじめて五島へ訪れたのは2013年。アパレルの仲間4人と有志のプロジェクトを組んでよく五島に通っていました。ただ遊びに行くのではなく、何か地域に貢献できることをしたいと思い島の人にヒアリングしたところ、当時から島の後継者不足に課題があることを知りました。そこで、街コンならぬ”島コン”を企画して、東京の女性と島の男性のマッチングイベントを数回開催したんです。その時の開催場所がソトノマというカフェでした。ソトノマと出会ったことが移住の大きなきっかけだったのですが、そこからソトノマを起点に現地の人とたくさん繋がり、五島のマグロの養殖の会社に誘われたこともあり移住を決めました。」
ソトノマと働くメンバーたち
桑田:「ホテルをやろうと思った動機は五島の注目度も上がってきて、著名人やクリエイターが足を運ぶことも増えたのに、面白い人たちの琴線に触れる上質な宿がなかった。それであれば、自分達が人を連れて行きたくなるようなおもしろい宿をつくろうと。
2018年に長崎や五島が世界遺産に登録され、移住者や観光客が増えていく中で、上質な宿が必要だと思いました。そこで、かつて自分達の仕事仲間でもあった建築家の谷尻誠さんに声をかけさせてもらって設計してもらったのが、hotel souです。」
ーーーー五島のポテンシャルを強く感じながらも、滞在の要となるホテルに課題を感じていた桑田さん。ないなら自ら作ってしまおう!と、ホテル運営は未経験ながら、大胆なデザインのホテルを五島に誕生させました。
ーーー2022年8月、この夏オープンしたばかりの「カラリト 五島列島」。大浜というエリアのビーチ沿いに建ち、”飾らない自分にかえる、晴れやかな時間”をコンセプトとしたホテルです。どこかホッとする雰囲気で、思わず「ただいま」と言いたくなるようなあたたかな場所には、代表の平﨑さんの想いが詰まっていました。
カラリト代表 平﨑雄也さん
平﨑:「2019年7月に、はじめて五島を訪れました。当時、東京の不動産開発の会社に勤めていて、”大浜でホテルをやるので投資してほしい”と話を持ちかけられたのがきっかけです。私自身、熊本生まれ熊本育ちなこともあり、いつかは九州に帰って、発展・活性化につながることをしたいと思っていました。五島のプロジェクトの話には、心ときめいてメインでやらせてほしいと企画を練ったんです。
しかし、当時の会社では規模が小さい、コンセプトが新しすぎるという理由で、保留の状態になってしまい、進めることが難しくなってしまいました。悶々とした想いでいたところ、投資家ではなく、一緒に運営をやっていこうよと、話を持ち込んでくれた現在の仲間に誘われたんです。即答でYESでした。新卒から13年いた会社を2020年に退職して、五島へ移住をしました。ちなみに、私も桑田さんと同じく、ホテル運営に関しては全くの素人で。投資家時代にホテルに関わったことはありましたが、本当にゼロからのスタートでした。」
平﨑:「都市の発展はデベロッパーがプロデュースしてやっていますが、都市は豊かになっていくのに人の心は疲弊していくような現象が起きている気がして、反比例だなと感じていたんです。そんな現代社会を変えたいという想いがずっとありました。疲弊しがちな都市の暮らしと、対立軸になるようなライフスタイルの新しい在り方を模索したいと思い、そのためには地方に人を連れてくる必要がある。都市ではなく、自然や文化があり、損得勘定がない人情や会話が生まれる。そういったカルチャーって九州らしくて、全員九州に移住しちゃえばいいのに!と思っていました(笑)
実は、ホテルをやりたかったわけではなく、移住に近い形の中長期滞在からはじめたかったんですよね。ただ、東京や他の都市部でいくら五島・九州いいですよ、と言っても伝わらない。とっかかりとしてのホテルが必要でした。ホテルで五島を知り、カラリトを知り、こういう文化があると、知ってもらうための第一歩ですね。」
西浦:「27歳から31歳まで、それまで勤めていたホテルの仕事を辞めて、4年かけて世界一周をしていました。旅に出た理由は、純粋に好奇心で世界を見たいという動機だったのですが、100カ国くらいをほぼ飛行機に乗らずに旅をしました。さまざまな国に足を運び、自分自身が多くの感動を受け取った中で改めて思ったのが、今度は世界中の人を日本に呼んでおもてなししたい、日本のことを伝えたい、ということでした。なので、帰国後は再びホテルマンの仕事に就きました。」
五島リトリート ray 支配人 西浦圭司さん
西浦:「最初は温泉地の老舗旅館、その後、京都の外資系ラグジュアリーホテルへ勤めました。シティホテルで働いてみて、シティの窮屈さというか・・・もっとゲストに過ごし方の提案の余地がある方が楽しいなと思って。そこからリゾートに目が向きました。その後知人からの誘いもあり、伊勢志摩、沖縄、ニセコ、そしてベトナムのホテルで働いてきて、今年の4月、rayの開業のために五島にやってきました。
多くのリゾート地を実際に見てきましたが、五島は特別ですね。赴任して数ヶ月経ちますが、いまだに毎日海を見ては綺麗だなと思って、飽きない。自然、食の豊かさなども、唯一無二です。そしてなにより、”人”の魅力の厚みがある。離島というある意味不便な立地柄なのか、島の人は”自ら生み出す力”に長けているように感じます。皆さん二足の草鞋どころか、三足も四足も、色んな活躍をされている人が多くて。自分の中になかった暮らし方や働き方の選択肢がある方が大勢いらっしゃって、毎日刺激をもらっています。」
西浦:「rayの開業にあたり、桑田さんには本当にお世話になりました。移住をしてきたばかりの右も左もわからなかった頃に、桑田さんが毎日のように色んな地元の人を繋げてくれました。その場で電話をかけてくださって、10分後に来てくれるから!と(笑)rayが地域と深い繋がりを持ちつつ、地元の方にご協力頂きながら開業を迎えられたのは、間違いなく桑田さんのおかげです。」
桑田:「平﨑さんとも、西浦さんとも、初めて出会ったのは、”ソトノマ”(カフェ)でしたよね。私は普段、ホテルの業務をやりつつ、ソトノマでも働いているのですが、西浦さんと平﨑さんがそれぞれお店に来た時、運命とご縁を感じました。今でも覚えていますが、店に入ってきた瞬間にピンときて、直感でわかりました。絶対これはカラリトかrayどちらかの関係者だなって(笑)」
平﨑:「桑田さんも含め、移住者の先輩たちが私たちが入っていきやすい土壌を作ってくれたのは、すごく大きいと感じました。今度は、自分がそうなって人を呼び寄せたり、繋いでいかなくちゃと思いますね。」
桑田:「私が移住したきっかけも、10年程前にUターン・Iターンで五島に来た移住第一波の先輩方の影響が大きいです。特に、ソトノマで店主をされていた和子さんをはじめとする、ソトノマファミリーの皆さん。島に通っていたときに、色んな人を繋いでくれて、あたたかい仲間と出会えたし、本当にファミリーのように接してくれたんです。サービスを超えたサービスを、素のままやっている。まだ完全に移住を決めきれていなくて悩んでいた時に”かえってこんね!”という和子さんの言葉に背中を押されました。なので、こうやって仕事できてくれた人も、観光で来てくれた人にも、自分が和子さんや他の先輩方にされてきて嬉しかったことを、そのまま返しているだけなんです。」
ソトノマで店主をされている和子さん
平﨑:「”かえってこんね”って、すごく五島らしい言葉ですね。こんなに優しい愛に満ちた言葉はないなあ。何かあったら帰ってこれる場所、島にきて力を活かして何かに挑戦することもできる。心のセーフティネットがあるからこそ、東京や都市部で頑張れる。この”ふるさと感”が、五島の一番の魅力だと思います。ちなみに、うちのスタッフもみんな和子さんの虜になっていますね(笑)」
西浦:「私たちも、和子さんに会いにソトノマへ行ってますね(笑)色々な土地でホテルに携わってきましたが、島の人たちは仕事で外から来る人にも非常にオープンマインドですよね。普通、同業者が来るとなると、ライバル視されたりあまり関わりを持ちたがらなかったりすることも少なくないです。ところが五島は、桑田さんもそうですが、多くの方が歓迎してくれて、一緒に盛り上げて行きましょうという心意気を感じています。」
桑田:「rayやカラリトができる前は正直寂しかったですね。開業と同時にコロナ禍で、メインターゲットのインバウンドも全く来る気配がなく、一人悪戦苦闘していました。いま、こうして同じ価値観を持った同世代の仲間が周りに増えたことは素直に嬉しいです。実際に、既にhotel souのお客様で、rayやカラリトにも泊まったよ、という方もたくさんいて”回遊”が起きているのを実感しています。souはどうしても3部屋しかないので、キャパ的にも限界があります。相乗効果でお互いハッピーな関係になれたら最高ですよね。」
西浦:「地域を深く知るには、ある程度の滞在時間が必要だと考えています。もちろん1泊でも楽しんで頂けると思いますが、2泊・3泊あるいはそれ以上滞在してもらった方が、五島列島の本当の楽しさを味わえるはずです。そんな時に、宿泊の選択肢が複数あるのは地域としての強みです。hotel sou、五島リトリート ray、カラリト、それぞれ個性が違って、異なる層にアプローチできるのも、五島の観光に厚みが出ると思います。カラリトで非常に特徴的だなと思ったのが、マリンスポーツなどのアクティビティは全て無料で提供しているんですよね?」
平崎:「そうなんです。アクティビティ=あそびと捉えていて、SUPなどのアクティビティは宿泊者は全てタダです。一緒にあそびにいきましょう!という感じで、特に予約も取らずにやっています。故郷に帰省したとき、親戚のおじさんが釣りに連れて行ってくれた、というような”誰しもが感じるふるさと感”、この雰囲気を出したくて。スタッフも親戚のお兄さんお姉さんのようなコミュニケーションを目指しています。風通しよく、気さくな空気感、それが五島らしいなと思いますし、実際に島にフィットしている手応えを感じています。」
アクティビティ=あそび
桑田:「私も試行錯誤を繰り返す中で、ふれあいがなにより大切だと考えています。最初は、お客さんとの距離感もわからず、コロナもあったので完全無人で営業していました。今は、お客さんによってはフルアテンドしますし、どこまででも接客します。スタイルを変えたことで、お客さんの反応がポジティブに変わっていきました。いままで、ローカルな体験ができる選択肢はたくさんありましたが、本当に良質なサービスを求めている人たちに対応できる場所がありませんでした。まだまだ伸ばせる余地がある部分だとも感じます。ぜひその領域は五島リトリート rayに引っ張っていって欲しいです。」
西浦:「お客様は、究極のラグジュアリー、ローカルにあるラグジュアリー、2つ求めていると思うんです。この掛け算が、新しいラグジュアリーなのではないかと、私たちは考えています。五島で自然や街も楽しみたいけれど、都会と変わらないような上質なサービスや空間も求めている人たちの受け皿となりつつ、島を楽しんでいただく。最終的には、hotel souやカラリトのように、島の営みに触れて頂けたらと思いますが、”入口”がそれぞれ違うからこそ、さまざまな層に五島に興味をもってもらい、足を運んでもらえるチャンスがありますよね。」
五島リトリート ray dining
西浦:「既に島のホテル内で”回遊”が起きているように、これからもお互いがお互いを紹介しあって、ライバルではなくパートナーとして連携して観光を盛り上げていきたい。地域の中で戦うのではなく、もっと広い視野でみると、五島に人を呼ぶためには”地域の総合力”を上げていく必要があると思います。仲間がいて、それぞれが違う切り口で入口を構えているからこそ、1つのホテルでは到達できなかった場所へたどり着くことができるのではないでしょうか。」
デザインに刺激され、地域との深い触れ合いを感じるhotel sou、共にあそび共に楽しむカラリト、上質な空間とサービスで島の魅力を引き出す五島リトリート ray。
オリジナリティあるホテルを”入口”に、島に住まう人、観光客、島の文化が有機的に混ざり合い、人々が出会い、新しい感動が生まれる。私たちのホテルがそんな場所になれれば、これほど嬉しいことはありません。
左からhotel sou共同代表 桑田隆介さん、五島リトリート ray 支配人 西浦圭司さん、カラリト代表 平﨑雄也さん
この地と出会い、この地に惚れ込み、3人の仕掛け人たちがそれぞれがたどり着いた五島列島。そんな「地域の案内人」たちがいるホテルで、それぞれの魅力を楽しんでいただき、島の暮らしや文化、あたたかさに触れていただければ幸いです。
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カラリト五島列島
hotel sou
【公式HP】
五島リトリート ray
カラリト五島列島
hotel sou
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